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鳥居教授の部屋

鳥居征司(とりい せいじ)
昭和44年生(神奈川県)

昭和63年3月   神奈川県立小田原高等学校 卒業 平成4年3月    筑波大学第二学群農林学類 卒業
平成9年3月    筑波大学大学院農学研究科(応用生物化学) 修了
                     学位取得  博士(農学) (筑波大学 博甲第1645号)
平成6年4月    日本学術振興会特別研究員 (DC1)
 〜 9年3月    中山和久 講師(現:京都大学教授),  村上和雄 教授(平成11年退官)
 
平成9年4月    バーナム研究所  博士研究員  (La Jolla, USA)
 〜 11年8月    Prof.  John C. Reed (現:Roche CEO)
 
平成11年9月   群馬大学生体調節研究所  遺伝子発現分野 助手・助教
分泌制御分野  
             泉 哲郎 助教授 (現:遺伝生化学分野 教授)
               竹内利行 教授  (平成21年退官)
平成23年7月   同 生体調節研究所 生体情報シグナル研究センター  准教授
 
平成31年1月  群馬大学 食健康科学教育研究センター 教授


私は現在、神経内分泌細胞の示す分泌機能とそれを調節・維持する機構を明らかにする研究を進めています。

<研究概要>
① Phogrinの機能を調べる
  ~ペプチドホルモンのオートクライン作用の機構とその生理的意義
 1型糖尿病の自己抗原として知られるPhogrinは、神経内分泌組織に限局して発現する膜蛋白質です。私たちは最近、膵臓β細胞培養株を使用して、分泌されたインスリンのオートクライン作用をPhogrinが特異的に制御することを明らかにしました ( Diabetes, 09)。( プロジェクトの紹介参照)
 現在、この知見を個体(マウス)で証明することと、他の神経内分泌細胞で同様のシステムがあるかを調べています。

② Phogrinの性質を利用する
  ~ペプチドホルモンの生合成、輸送、分泌、再利用、そして分解機構
 神経内分泌細胞内でPhogrinは、ホルモンを含有する分泌顆粒に局在しています。この性質を利用し、GFPなどとの融合蛋白質によって分泌顆粒を蛍光標識し、ホルモン分泌過程をリアルタイムに視る研究が行われています。
 私たちは、Phogrinが分泌顆粒に局在するメカニズムを明らかにしてきました( Traffic, 05;論文印刷中)。また、Phogrin-EGFPを安定発現する細胞を樹立し、ホルモン分泌機構の一端を明らかにしました( JBC, 04 ほか)。
 神経内分泌細胞の示すホルモン産生能は、開口放出(分泌)過程がおもに調べられていますが、その全体理解には、分泌だけではなく、ホルモンの生合成、輸送過程(顆粒形成)、分解機構などの解析が必要です。私は現在、Phogrinをマーカーとした新しい解析法を開発し、これらの分子メカニズムの解明に取り組んでいます。

③ 低分子化合物を利用する
  ~細胞生存・細胞死のシグナル伝達機構
 神経細胞、内分泌細胞の機能障害や細胞死によるマスの減少は、神経変性や生活習慣病の原因の1つです。酸化ストレスは、これらの疾患における細胞死に関与しており、また、神経・内分泌細胞は酸化ストレスに弱いと考えられています。
 私たちは、低グルコース環境の持続によって引き起こされる膵β細胞の細胞死が、活性酸素種(ROS)の蓄積を伴う酸化ストレスが原因であることを見つけました( Endocrinology, 08)。また、過剰なグルタミン酸で誘導される酸化ストレス性の神経細胞死に、ミトコンドリアに加えてオートファゴソーム/リソソームから産生されるROSが関与していることを発見しました( JBC, 10)。
 これらの知見の獲得には、低分子蛍光プローブが威力を発揮しました(下、例図)。私は、低分子化合物を利用したシグナル伝達研究を群馬大学工学部のグループと連携して進めています。また新潟大学脳研究所神経内科のグループとは、神経細胞死に関する共同研究を行っています( 脳研究所共同利用・共同研究)。